伊豆高原の家

敷地は遠く相模湾を望む、緑豊かな別荘地の一画にありました。

 

しかしその土地は、起伏の激しい溶岩の上に鬱蒼と樹木が生い茂り、まるで小さな原生林のよう。

その上、道路からの高低差は最大6mにも及び、中央は三方を斜面に囲まれた谷のような地形です。

 

一見した限り、一般的に考えられる建築可能エリアはほとんど見当たりません。

 

盛り土して谷を埋めれば道路からのアプローチが更に困難になる上、高いところを削ろうにも溶岩は固くて削ることは不可能。

さらに、伊豆半島は国立公園指定地域。高さ制限や面積制限もあるため、建物を大きくして解決することは得策ではありません。当然建設コストにも跳ね返ります。

 

そこで自然の地形はそのままに、あえて斜面に寄り添うように建物を配置。土地の傾斜に沿ってフロアレベルを変化させ、いろいろな高さの内部空間を楽しめる家を提案しました。

 

現地を訪れた際、谷底で空を見上げた時に吹き抜けた風と木漏れ日。その瞬間よぎったイメージ。

 この地形変化に沿って一番見晴らしの良いところに辿り着くまでのストーリー。

 

建物内部で地形の記憶を継承する、森の谷の家を計画しています。