Cafe OSONO
敷地は静岡県中部を流れる川の上流に広がる農地の一画。市街地から車で15分ほどの距離でありながら、小高い山々に囲まれたこの地は、春にはまるで桃源郷のような雰囲気に包まれます。
道路沿いに植えられたユリノキ。ブルーベリーやハーブ。隣地に広がるキウイフルーツ畑。
自然に対し年月を重ね丁寧に人の手が入ることで、地域のくらしを表す「農の風景」がそこにはありました。
この豊かな環境を最大限享受することを目指し、畑の農産物や食のワークショップを楽しむカフェ、美術制作の場となるアトリエ、オーナーの住宅という3つのプログラムが計画されました。
けれども設計にあたり、この周辺環境を侵さないようにと意識すればするほど逆に計画はまとまりません。広い畑の風景の中で建築の身の置き場所が定まらず、プログラムと一体となった新しい状態にならないのです。
しかし幾多の案を出し何度も現地を歩き回るうちに、畑の中の場所場所ごとの領域性に着目するようになりました。
「足元を見ながら歩き、たどり着いたら周りを見渡す。散策する楽しみと発見性がある畑のような建築をつくれないか」
1階ではカフェとアトリエと住宅をそれぞれの畑と見立てて分棟し、それらをつなぐ畦道のようにアプローチデッキやテラスを一体的にかけ、周囲からも自由に行き来できるようにする。
アトリエと住宅は2階でつなぎ、カフェと連棟とした大小の小屋のような外観とすることで、農地の中に軸性を与え、訪れる人にも親しみやすいランドマークをつくる。
空間を畑に見立て、次の畑に行くことを楽しみ、訪れるたびに発見があるアトリエ・カフェを計画しています。