身延山久遠寺

静岡市清水区から山梨県甲府市を結ぶ国道52号線は、古くから駿河国と甲斐国をつなぐ重要な街道でして、駿河側からは甲州往還、甲斐側から駿州往還などと呼ばれていました。

そしてこの道はまた、身延山久遠寺への参詣道として利用されたことから、身延路とも呼ばれていました。位置的には、山梨県の下側が静岡側に食い込んでいる部分の真ん中あたりでしょうか。

日蓮宗総本山の由緒あるお寺です。今から750年前(1274年)に開創され、長きに渡り連綿と歴史を紡いで参られました。

私自身この街道は今まで何度も往復してきましたが、街道から門前町方向に入ったことは一度も無かったため、初めて訪れてみることにしました。

ちなみに参道は県道804号という公道ですが、寺域の入口で県道の上に久遠寺の総門がドーンと構えています。何しろ山梨県の成立より古くからありますから。ここはそういう所です。

総門から気をつけながら車を走らせること5分、近くに駐車させていただいて、三門に到着です。ここから境内が始まります。「空」「無相」「無願」の三解脱をあらわす三門。その造りはとても立派で、張り出した庇を支える組手の数々、柱梁の彫刻や迫力に圧倒されます。

三門を抜けると、石畳の参道が始まります。石畳といっても、ゴロゴロとした荒々しい石畳で、両脇にそびえる樹木は天を衝く勢いです。慎重に、地面を踏みしめながら歩いてみて、このサイズの石でつくられた道は少し不思議な感じがしました。何て言うのかな、人生なんでもスムーズにはいかない凸凹した感じをイメージさせるような。今時転びにくい仕上げにすることは簡単ですが、この仕上げに留めて置く事に、何かしらの意味があるのかもしれません。

さて写真の奥に石段が見えると思いますが、遠目ではもう壁にしか見えません(笑)。

菩提梯という、本堂へと続く287段の石段です。一段25センチはあり、途中まで登ると怖くて後ろは向けません。「よいしょ、よいしょ」と次の一歩を出すことに必死でした。

登り切れば涅槃に達するという意味の梯ですから、そう安くはありませんね。体の弱い方は本当にお控え下さい。

 

登りきると左側に五重塔がそびえていました。

明治8年の大火で焼失したものが、2009年に134年ぶりに再建されました。

皆さん、早いけど私は言いたい。日本中に五重塔は数あれど、山の上に建てるのがどれほど大変か。私の足は既に攣りそうです。

機械や車もない時代、まして集成材なんかない無垢の一本物の巨大な木材の数々を、高所に運ぶのがどれほど大変か。口が開いてしまいましたが、それも修行ということでしょうか…。

 

正面には1500人の法要を一度に奉行できる本堂、その右隣に日蓮聖人の神霊を祀る祖師堂が並びます。内部は写真を控えましたので、現地で見ていただくのが良いと思いますが、重厚でとても立派な作りです。素材の数々が本当に凄く、総本山としての格式を実感しました。

参詣後の良く歩いた体には、身延まんじゅうの甘さが沁み入ります。近くをお通りの際は、是非一度お立ち寄り下さい。