多治見には小さなタイルを専門に扱う会社もあります。装飾用に開発されたモザイクタイルです。細かなタイルたちが作り出す模様で飾られた水回りや壁面を見たことがあると思います。
モザイクタイルミュージアムは、藤森照信氏が設計しました。外観はまちのなかの小山のような。タイルの原料となる粘土の鉱山をモチーフにしたとのことです。近づいてみると1階部分がすり鉢状にくぼんでおり、可愛らしい木の扉から内部にアプローチします。
外壁にはモザイクタイルが点々と埋め込まれ、高いところに木の管のようなものが出ています。何でしょう。中に入ってみると大階段。どうやら4階まで一気に伸びているようです。
最上階の4階は屋外展示室となっており、屋根にぽっかりと穴が空いていました。表に見えた管は雨水排水用の樋でした。
内部の展示では、磁器タイルの歴史について学ぶことができます。戦前、多治見市の前身である笠原町の山内逸三氏が釉薬を施した磁器質モザイクタイルの開発に成功し、地元に広がり国内最大のモザイクタイルの一大拠点となったこと。ヨーロッパや北米などにも輸出を広げ、自動車産業が台頭するまで、名古屋港での主要な輸出品であったとのことでした。
この多治見のエリアの磁器産業と常滑の陶器産業を共に学んだことは、大きなことでした。
設計事務所にとっては、ともすればただの建築材料の一つとして見られがちなタイルも、その誕生や生産過程の歴史の中で、情熱を持ち日々研鑽を積みながら向き合っている多くの人々がいることを改めて知りうる貴重な機会になりました。