とこなめ陶の森 陶芸研究所

さて常滑に着きまして、ホテルに寄って全国大会の会場に顔を出し、街を丘の方に歩き出してみました。まずは港。重い焼き物製品を陸路で運ぶのはとても大変です。常滑では昔から海路で全国に出荷していたんですね。江戸や上方はもちろん、遠く平泉まで常滑焼が広まっていたそうです。

街中は、古い木造家屋をよく見かけます。もちろん建て替えされたものもありますが、窯の煙突がチラホラ散見されます。元々常滑では、家内工業としてあちこちに窯があり、住職一体の生活が地域で営まれていたようです。古い建物を改装し、ギャラリーにしている様子が多く見られました。

海から東へ進み丘を登ると、常滑市が運営している「とこなめ陶の森」に着きました。常滑焼きの振興と伝承、やきもの文化の創造と発信のため、資料館、陶芸研究所、研修工房が森に包まれて置かれています。

まず向かったのは、陶芸研究所。こちらはモダニズム建築のパイオニアである堀口捨己の設計です。茶室の研究者でもある氏の設計は、水平垂直の軸線や割付の合理性を追求し、余分な線がない、シンプルで明快な構成の中でドラスティックな演出をするものでした。

階段は宙に浮かせ、天井照明は幾何学パネル、展示室のトップライトは屋上の専用明り屋根を用いるなど、世にいう数寄屋というより、削ぎ落とした男性的な構成美の追求性を感じました。

屋上から西側を望むと、港の向こうに伊勢湾が見えます。市の夕日スポットでもあるそうです。

資料館では、常滑焼千年の歴史を知ることができます。なぜこの地でやきものが栄え、どのように暮らしを支えてきたのか。美術品というより、生活用品をつくる地域産業として。地域のくらしを学ぶことができました。

ちなみに常滑市の初代市長は伊奈長三郎氏。伊奈製陶(現INAX(LIXIL))の創業者でもあります。陶芸研究所は、伊奈さんが自社株を寄付した資金で1961年に建てられました。各建物の受付で若い人たちが働いているのが印象的でした。夢を持ち全国から研修に集まっているんでしょうね。