実は今年は本当に不幸と災難続きで、さすがにブログにもなかなか手が出ない状態でした。時々覗いて下さった方、ごめんなさい。
自分自身、今は仕方がないなと思いながらも、何とかいい方向に気分転換したいという思いがあり、ワクチンも打ったし寒くなる前に、神宿る地(と勝手に思い込み)諏訪に行ってきました。
中部横断道が先頃開通したおかげで、静岡市から諏訪までは車で2時間台で到着し、こんなに近くなったのかと本当に驚きました。
最初に訪れたのは神長官守矢史料館です。諏訪大社の神長官という役職を代々務めてきた守矢家の史料館ということで、神事などに関する数多くの古文書を収蔵しています。鎌倉幕府や武田晴信、真田昌幸の書状など、戦乱の中でも諏訪大社がこの地に連綿と在り続けてきたことが分かります。
さて、ちょっと変わったこの建築は、建築家の藤森照信さんのデビュー作です。藤森さんの実家はこの近所にあり、設計者を探しているときに声がかかったとか。ちなみに藤森は諏訪に多い姓のようですね。Google mapで諏訪を検索すると、たくさんの藤森さんが出てきます。
外壁はサワラの割板を貼ってあり、30年間張り替えることなく、いい味が出てきました。
屋根は上諏訪産の鉄平石葺き、軒先を貫く柱は諏訪地方のミネゾウの木です。本人曰く、軒が寂しいので四本柱を建てようとしたら偶然鉛筆が走って軒を突き抜けたとか。
内装は藁を混ぜた色付きモルタルで塗り上げてあるので、構造は木造かと思いきや、そこはしっかり鉄筋コンクリート造でした。
2階の収蔵庫は残念ながら非公開でしたが、金物やガラスは全て手作りで、質感や空間プロポーションの見せ方に拘りがありました。奥の壁を傾斜させてあったり、階段もわざと踊り場までにして、上半分はわざわざ機械で下ろしてつなげる設計ですからね(笑)。
外に出てから、東に見える雪をかぶった八ヶ岳の山々を眺めていると、なんとなくこの一体に分布した、縄文遺跡につながる土着性のようなものを感じました。
帰り際、何気なくパンフレットを開いてみたら、プロジェクトデータが載っていて、目が釘付けになりました。1991年竣工、鉄筋コンクリート造2階建て一部木造、延床184㎡の建築をつくるために、いくら設計監理料、外構その他を含んだっていったって、総費用が1億3千6百万円って…。
本当ですか!いや、本当なんでしょうけども!
すごいね諏訪。