仕事で御殿場に行った折に、東山の旧岸邸を見学してきました。
東名高速より東側の東山地区は、明治の頃から多くの政財界要人や外国人の別荘が建てられた地域。緑豊かで落ち着いた環境は、人々の心身をリフレッシュできる社交の場になりました。
この建物は1969年に竣工し、施主は元首相の岸信介氏(先日辞任した安倍総理の祖父)、設計は近代数寄屋建築の大家の吉田五十八氏が手掛けました。
北側から木立を抜けてアプローチし、玄関ホールを抜け来客用の居間に入ると、南側には小川の流れる開放的な庭園が広がります。上の写真は庭園からの振り返り。
庭越しに森を眺めているだけで、心が癒やされていくのが分かります。海の別荘とは違う、森の別荘の良さですね。
内部の造作や使用している材は、どれも丁寧に良い材が使われています。納まりのディテールも艶があります。
設計した吉田五十八氏によると、政治家の別荘はいかに私的であれ、いつ公的な要素が入ってくるか分からないので、サービス部門を中心に配置し、来客スペースと生活スペースをスムーズに分ける空間構成に配慮したとのこと。数寄屋の大家といえどそこは一流の建築家、押さえるところは押えています。事実この建物を建てたのは岸さんが総理を辞任した後ですが、日本の各国際団体の要職を努めていた関係でアラブの国王まで訪れていますしね。
住まいとしての機能が美しい自然と一体になった、素晴らしい建物でした。
もしひとつ言えるなら、床材の張替えを検討してもいいかも。なんてお節介かな・・・。