青森にて

帰りは岩木山を左に眺めながら津軽平野を北上し、本州最北の美術館、青森県立美術館へ。三内丸山遺跡のそばに位置します。新青森からバスがなく、タクシーで行きながらこの辺りの地形を眺めていたのですが、遠く奥羽山脈からつながる丘陵が陸奥湾に落ち込み、手のひらで包まれたような形の小さな青森平野に縄文時代から人々が住んでいたということを知ると、厳しい気候の中でも外敵からは守られた安全な地域だったことがうかがわれます。この日(10月18日)は日中暖かく、走ると汗ばむくらいでした。

 

さて建物の設計は青木淳さん。以前講演を聞き著書も読みましたが、正直よく分かりませんでした。なので百聞は一見にしかず、いい機会です。建築の基本構成は、三内丸山遺跡の発掘現場の濠から着想を得たようで、広大な原っぱのような敷地の地面が幾何学的に切り込まれています。その上に白く塗装したレンガの塊が覆いかぶさり、その隙間の空間が展示空間となっています。1階で受付をしてどこに行くのかと思ったら、エレベーターで地下2階まで下りて、そこからスタートとのこと。この直接機械に頼る構成がいいのかどうか、正直微妙なところで、私としては歩きながら下りていくことで芸術世界にゆっくりと分け入る心理的操作をしてもいいのではと思いました。建物の断面コンセプトに気を取られすぎて上下の移動に面白みがないというか、もったいないというか。う~ん、どうなんでしょう。

 

展示の方は、シャガールのバレエ「アレコ」の背景画や、青森出身の奈良美智の作品、そして郷土が誇る版画家棟方志功の展示が特徴的でした。写真公開OKの作品をアップしましたが、特に棟方志功の作品は、作者の意思により広く世に広めてほしいということでした。

棟方志功の死してなお残るこのメンタリティー。行きの新幹線の中で読んでいた太宰治の「津軽」で感じるが如く、中央に対する反骨や自意識が、自己の創作姿勢に深く影響しているのかもしれないと感じました。

 

美術館の回りはだだっ広い芝で何もなく、外構計画としては不思議な感覚でしたが、冬になれば全てが雪に覆われることを考えれば、ここは冬の美術館なのかもしれませんね。でもその場合どこを通っていくのだろうと少し心配も…。

さて今回の旅の記録はここまで。

弘前、青森の印象はと聞かれたら、「意外と明るい」。もっと厳しいのかなと勝手に思い込んでいました。もちろんまだ10月ということもありますが、のどかな地域の雰囲気というのかな。どこを見ても森がある優しい風景でした。

北国なんだと実感したことといえば、住宅に軒樋がついてないこと、雪下ろしのために屋根に登れるよう外壁にハシゴがついていること。それも素直な営みで納得しました。また来れる機会があることを楽しみにしています。