森町から掛川へ

昨日はJIA静岡の建築ウォッチングで森町と掛川に行ってまいりました。最初に訪れたのは森町の山間に建つ友田家住宅。国指定重要文化財です。日本昔話で出てきそうな庄屋さんの家のフォルムですが、遠州の古民家ではこのような形態がよく見られます。

味のある茅葺き寄棟造りのこの屋根も5年程前に吹き替えられており、その際に耐震補強も行われました。維持をしていくのも難しい所もありますが、森町がサポートしながら後世につなげています。

この日は森町教育委員会の方が現地で説明をしてくださりました。寒いからと中では囲炉裏に炭火をおこしてお茶を出して下さりました。温まりました。ありがとうございます。

友田家の祖先は伊賀国鞆田荘だそうで、平清盛の厳島大明神造営に関わり、奥出雲で刀鍛冶になり、源平合戦後に平家落人としてこの地に土着したとか。森町には天方城という城があり、徳川と武田が遠州の覇権を巡り激戦を繰り広げた歴史もあります。現在の当主の方が47代目とのことですが、歴史の変遷の中で建物が残り続けるということに運命的なものも感じました。

午後は掛川市森林組合新事務所を訪れました。中規模木造2階建てで、設計はJIA静岡の前会長でもある村松篤さん、構造設計は山辺豊彦さんが担当されました。

壁や屋根版に120ミリ厚のWALC(ウッドエーエルシー)を採用しており、面材として剛性をとることで屋根垂木を無くし、同時に断熱、仕上げを兼ねる造りとなっています。床には土足使用の圧密フローリングを採用し、全て掛川の木を用い、岐阜や長野の製材会社が建材化しました。そのおかげで実質工期が75日という驚きの工程を実現したそうです。

見学と共に関係者の講演会が行われ、構造設計者の山辺さんもお話くださりました。山辺さんは木造構造設計の第一人者でして私自身お会いするのは初めてだったのですが、ポイントをついた解説で話が非常に分かりやすくどんどん引き込まれていきました。特に木造の架構計画の考え方、ピン接合を減らして安定させていく手法や、一方向ラーメン&一方向壁で構成するセオリー、木の素材特性を活かしたディテールの設計法など、とても参考になりました。講演の後で個人的に建物を見ながら話をさせて頂きましたが、フランクで良いお人柄の方でした。

設計者の村松さんが提唱した、この地域の情報発信基地になるようにという考え方も賛同しました。情報は何も行政や観光施設、メディアが独占しているわけではない。こういう組合が地域の中で担ってもいいですよね。

組合長(実は私の親戚(笑))の話によると、昔の人は「利益を生むわけでもない建物にお金をかける必要なんてない」とも言ったそうです。でも若手が森林の仕事を担ってくる中で、皆が働きやすい、お互いの顔が見える開かれた環境が必要なんじゃないかと思い建設することを決めたそうです。そして新事務所ができてからいいこともあり、木を伐る中で、皆が川下の事も考えながら大事に伐るようになったとか。何メートルものが欲しいという注文があった時に、「ああ、建物のあの辺りの部材に使うのかな?」と川上で思ってくれるということは、川下にいる我々にとってとてもありがたいことです。その意味でもこのプロジェクトは大成功だったのでしょう。昨日は仕事中にも関わらず見学をさせて頂き本当にありがとうございました。今後ご縁があれば是非一緒に仕事をさせてもらえればと思います。これからの掛川市森林組合さんのご発展を心よりお祈りしています!!