毎月、日本建築家協会本部からJIA MAGAZINEという冊子が送られてくる。
一般の方が目にすることはあまりないが、インタビューや論考を中心に、我々建築家が歩んできた道、これから進む道を考えさせてくれるものでもある。
先日届いた7月号を開いてパラパラと眺めていたら、3月に参加した熱海リフレッシュセミナーについて、後日自分が本部に送ったレポートが掲載されていた。
自分の文章には、「事業家としての目を持ち建築活動を続けたい」とタイトルが打ってあった。
ん?と思い読んでみたら、職能領域の拡張について、確かに文章の終盤をそう括っていた。少し前のことなので忘れていたが、今の状況のきっかけとなった当時の気持ちを思い出したので、改めて書いておこうと思う。
空き家問題、商店街の衰退、団地の高齢化など、現在社会を取り巻く問題については、一方向からこういうものを設計して下さいと
発注されるシステムで解決できるものは少なく、どのような手法で問題となっている状況を改善させられるか、企画やアイデアの提案に負う所が大きい。
21世紀に入り社会状況が特に変化している中で、既存の社会を再編集し、新しい社会を生み出す仕事が求められている証拠である。
建築の寿命は数十年と長いが、社会問題の顕在化は数年で起こる。両者のミスマッチを紡ぐ、編集力が問われているということだ。
それはいきなり建物をつくることではなく、人の流れや生活、経済やコミュニティといった「コト」を創り出すことに他ならない。
その上で、新しいコトが営まれる場としての環境を、しっかりと建築に帰結させてあげる必要があるということだ。よく簡単にハコモノはいらないという人がいるが、それはコトに対するその人の認識が今だに空っぽであるということを示しているだけである。
議論の中で私は、経済のデザイン、マーケットのデザイン、制度のリ・デザインが必要であると発表させていただいた。
建築は社会を良くするための手段と捉え、まずはその仕組みづくりに邁進すればよい。
社会の問題や要望は、事業の芽でもある。
それらを解決し、スムーズな状況をつくり出す事業の場づくりは、建築家の大切な仕事だと私は思っている。
それには、単なるモノをつくる設計者ではなく、コトを考える事業家としての目を持った建築家で在ることが大切だ。
「いろいろ条件はあるけど、こうしたらできるよね。これならやる価値あるよね」
そこにこそ、夢があると思っている。