二日目は生憎の天気でした。標高の高い宿の周りは雪景色。ギョッとして早く下りねばと長野市に近づいてくるに従い雨に変わりました。
さて、本日のお目当ては長野市にある長野県信濃美術館と善光寺です。この街の様子を見るのは初めてなので楽しみにしていました。
信濃美術館は建築家の林昌二氏が設計されましたが現在は老朽化で建て替えが計画されています。確かに中の状況を見ると、増改築がなされ使われ方もだいぶ変化したのか、あまり空間の良さを活かせていない様子でした。
なので連結されている東山魁夷館のほうへ。こちらの設計は美術館建築のマエストロ、谷口吉生氏。曲線を使わずに直線のみで豊かな空間を創り上げる手腕には定評があります。
東山魁夷の絵は昔から好きで今回の旅行の大きな目的の一つでした。彼の作品は風景画ですが、まず対象を見てスケッチをし、それを下絵にして自らの表現に昇華させる過程、その熱量が良く分かりました。対象を見つめる眼差し、それを包み込む世界観から、素直な感受性の持ち主であることが伝わりました。
その後はお隣の善光寺へ。善光寺って長野市でどんな存在なんだろう?そんなことを考え静岡から車を走らせて来ました。長野の平野ってまとまっていて本当に広く(長い)、その自然の中に集落が散在し、次第に集まって都市ができていくのですが、この街は山が近く、まさに野の中にあるという感じ。経済が第一という感じはしません。太平洋ベルト地帯とは都市構造の背景が異なるのでしょう。
善光寺の門前を歩いてみれば、一帯が全てお寺の関係で成立しており、門前町として蓄積された歴史、伝統の厚みが分かりました。
一方で松本。最後に国宝の松本城に寄りましたが、こちらはやはり城下町ですね。信州大学本部や日銀もあり、小さいながらに新陳代謝を感じます。
松本はクラフトフェアが有名で、まつもと市民芸術館(伊東豊雄氏設計)があったり、サイトウ・キネン・フェスティバルがあったりと、文化を大切にする風土です。しかし文化とは、経済的な背景がなければ成立しないのもまた事実。特急列車で東京と名古屋を結ぶ交通の要衝として発展して参りました。
建築や都市というのは、現在の姿だけ見ても得るものは知れていて、やはりその成り立ち、今後どのようにしていくべきかを重ね合わせながら見るようにしています。人の表情や歩く速さと目線、繁華街の姿も大事で、今日は古いものを見たからこそ、昼食は善光寺の路地裏のレストラン(こまつや)で、パスタを食べてみました。気持の良い店でした。伝統の中、少しずつ変化していく街が楽しいですね。
帰り道、塩尻の辺りでまさかの大吹雪。なんとか無事に帰って来れ良かったです(汗)。