日本列島は大雪でてんやわんやの週末ですが、静岡市は雪もなく。
JIA静岡で市内の建築と文化を訪ねる洋館めぐりツアーを企画し参加してきました。
まずは、米国人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計し、昭和15年に竣工した「旧マッケンジー邸」にお邪魔。
駿河湾が一望できる海岸沿いに建てられたスパニッシュ様式の住宅です。
「わが家が、他のどこよりも居心地のよい、愉快なところだと気がつけば、わざわざいろんなところに行くはずもなく、従って道楽もしません、堕落もしません」
明治末期から昭和にかけて1400を越える建築の設計を手がけ、教会やミッションスクール、百貨店の設計で有名になったヴォーリズですが、彼が最も情熱を注ぎ重視したのは実は住宅でした。
お茶の貿易商として忙しい日々を送りながらも喘息の持病があるマッケンジー氏のために、温暖で風通しのよいこの場所に「人を温かくもてなせる家」をつくりました。
厨房にはアメリカ製の調理道具、大理石の配膳台、タイマー付きオーブンや冷蔵庫まで。もちろん電気式。
当時の日本では夢の様な設備ですが、ヴォーリズは健康や衛生に強い関心を持っていたので、従来の日本家屋のように暗くジメジメした厨房でなく、直射日光が差す明るい場所に厨房を設け、設備も可能な限り整えたのでした。
ちなみにリップクリームや医薬品で有名な近江兄弟社(滋賀県八幡)もヴォーリズが創業してます。
もともとは英語教師として来日、その後宣教師になり、建築家になり実業家になり・・・。
自分の思想を現実にする道を突っ走ってますね。いいことです。
そうそう、ヴォーリズとマッケンジー氏には天体観測という共通の趣味もありました。
外観写真の塔の先端は天体観測の部屋になっています。目の前は遮るもののない海ですから、夜空いっぱいに光り輝く星たちを見れたことでしょう。こんな共通点も、異国の地で生きる二人にとって、つながりを確かにしてくれるかけがえのないものだったのかもしれません。
当時、静岡市の安西一帯には日本茶の輸出に関わる外国人が多く居住していました。
静岡茶という日本茶の大産地を背景に、目の前には日本茶輸出の7割を占める国際貿易港の清水港。
全国一のお茶の集散地ともなったこの地に横浜や神戸から外国商社がこぞって集まり、茶工場を構え莫大な利益を得ていました。
そしてそんな彼らの存在を受け皿に英語教師や教会関係者などが集まり始め、次第に外国人同士のネットワークができてきたのでした。
ウィリアム・メリル・ヴォーリズ。彼もその中で出会った一人でした。
つづく