出雲大社の大鳥居から参道にそって南に歩くこと約10分。
出雲市役所大社支所の裏側にある、大社文化プレイスです。
菊竹清訓事務所出身の伊東豊雄が設計し、1999年に竣工した複合施設。
複数のホールからなる「うらら館」と出雲市立大社図書館「でんでんむし」から構成されています。
ゆるやかなカーブのアプローチ、半ば盛土で埋まったような建物を大屋根が一体的に包みながら、カーテンウォールがくっきりと形態を定義しています。
竣工模型を上からのぞいてみると、なんだかこの地方特産の勾玉のようにも見えますね。
三角地をどう使うかへの回答だとしても、多少は意識していたりして・・・。
小ホールと大ホールが大きな空間に挿入するように配置され、人々は特定の場所にいることを強要されずゆるゆると居場所を選ぶことができる雰囲気です。
広い場所で待ち合わせするも、少し奥で立ち話するも、続いているいったい空間の中で視線を区切ること無く移動だけで成立します。
このあたりの雰囲気や思想が、その後伊東さんの名前を一躍世界的に有名にした仙台メディアテークに引き継がれていったのだろう。
この日は曇りだったんだけど、ホールの採光をカーテンウォールから取り入れる自然光を基本とし、過度に照明をギラギラさせていないのがいいのかもしれない。
よく考えれば一日の中の時間帯でいろいろな照度があるのが当たり前で、こういった地方の文化施設としてはそれを素直に受け入れたほうがしっくりくる。
ザ・立派なホール、綺羅びやかなホワイエ、ゴージャスなソファーが欲しいわけではないのだ。
図書館「でんでんむし」に入ると一転、光のシリンダーから自然光が満ち溢れてくる。
外から想像もできないほど人がいる。図書の並べやすさ第一とした、決して四角い空間ではない。
だけどその有機的な変化が自然で、使いやすそうなのだ。図書館なのに、生命力と躍動感がある。
事実、学生が勉強したり市民が自由に利用している様子はちょっと微笑ましい。
こんな片田舎でも向学心に燃えているんだ・・・と、無礼を承知で感心したくらい。
今日、出雲の地で見た二つの現代建築。
槇さんの「設計したものをこの地につくり与える」というスタンスに対し、伊東さんは「自分自身をこの地に一度下ろし、そこから一緒になって立ち上がらせる」というスタンスのような気がする。
ようするに、人間の営みを許容することができる、懐の差とでもいうのか。
槇さんには悪いけど、現代的でありながら、ある意味土着的になれる伊東さんの勝ちだ。
旅の最後に満足でした。
そしてこの後、特色が分からない出雲そばなるものを駅で食べ、地獄の帰路につくことになる。
指定席が満席だったので、今度は座れるようにと始発駅で40分前から並びなんとか席にはつけたものの・・・。
特急やくものなんたる凄まじさ!岡山についた時は、Gで地球に下りた宇宙飛行士の気分になりました。
新幹線ってホントに偉大です。
3日間の内容でしたが、忙しさでアップするまでに半月も経ってしまいました。
日付自体は合わせておきましたが、どうもすみませんでした。
島根紀行はこれで終了です。長々とお付き合いいただきありがとうございました。