松江城から下りてきて、武家屋敷群の一角にある田部美術館にやってきました。
もちろん途中で足が攣り、搦手口の馬洗いの池近くで不自然に静止していたのは言うまでもありません・・・。
さてこの美術館、菊竹さんの設計手腕を認めた田部長右衛門さん(前記事参照)がとうとう自分の家の美術館設計を依頼。田部家代々の茶器や美術工芸品、藩主松平公ゆかりの品々などが展示されています。
なにしろ田部さん自身が島根新聞社(現山陽中央新報)の社長も努めた生粋の文化人。地域の文化芸術の保護のためこの美術館の建設は悲願だったようです。
出雲の田部家といえば、元来はたたら製鉄の経営がルーツ。山林地主となったのも莫大な量の木材を燃やすためでした。そこで菊竹さんは、屋根にコールテン鋼という錆皮膜を施した特殊鋼板を採用しました。
RC造の白亜の建物との対比で、小さく控えめながらも、上品な佇まいが醸しだされています。
急勾配の屋根の下はどんな空間になっているかというと、
山側を廻りゆったりと回遊しながら、庭側の空中スロープを登って上階に進んでいく動線。
化粧突板のシンプルな天井が織りなす勾配変化と、壁面の開口比率が美しい、展開図のプロポーションが非常に優れた内部空間。
決して華美ではない、どちらかと言うと素朴で温かい雰囲気です。おっとりとした松江の気質を、お二人はよく分かっていたんでしょう。
気質といえば長屋門にある受付でお金を払う時に、続きの割引シートを出したら、
「お兄さん、次のとこで使いやすいように切り込み入れといてあげるよ」
と受付の女性がハサミで勝手にチョキチョキ切って、タコ足短冊状にしてくれました。
おかげでワサワサになりカバンに入れるのを戸惑っていたら、受付内で隣の女性がくすくす笑いをこらえてる。
「あれ、あたしいいよねぇ。使いやすいもんねぇ・・・」と中でごにょごにょやりとりしている。
いいとこです。松江。
この建物が面する塩見縄手を歩いていても、お茶会やお花の稽古に向かうのか和服姿の素敵な女性たちに行き交いました。って、すぐ見てしまうのが悪い癖(笑)
日常を楽しんで生活していることが伝わってきます。
う~ん、やっぱり今夜は交流会はパス。
一人でのんびり食事をすることにしようかな。