内と外とその庭と

 

 

庭と家の関係をずっと考えていたら、煮詰まってしまった(笑)

 

そんなときは、お片づけに限る!整理整頓っ!

 

と、大量の文庫本の整理をしていたら(小説が好きでして)

 

吉行淳之介の驟雨(1954年:芥川賞受賞)が出てきた。

 

ふむ。しばしパラパラ・・・。

 

男と女か・・・。

 

行こう。

 

と、気分転換に(放り出して?)やって来たのは掛川の吉行淳之介文学館。

 

設計は日本を代表する数寄屋建築の名手、中村昌生先生です。

 

基本的に数寄屋であろうと木造建築というものは、構造上自然な安定感を求められる。

 

鉄骨やコンクリートのような一部に応力が集中するような計画はできないので、空間の豊かさを実現するにはその配置計画が大きなウェイトを占める。

 

この建物もそうだ。豊かな空間を実現する肝はハの字型に開いた3つの棟がゆとりを持って配置され、付設された茶室や回廊がアクセントとなり、内部から外部に移動しながら変わりゆく風景を楽しめるつくりとなっている。

 

そしてそ各部の領域の性格に合った庭が建物にどっしりと呼応している。

 

そう、廻る感じ。廻る感じ・・・。

 

・・・っ!!

 

温めておきましょう。

 

 

 

廻り動線といえば、近くにある「ねむの木美術館」

 

建物に入り受付を済ませたら、そのまま建物を突き抜けて外の丘を廻って山際のお尻から入って行く。

 

この行為に何の意味があるのか、中で移動した方が雨に濡れなくて済むじゃないかと言う人もいるけれど、いわばこれは見る人に気持ちの準備をさせる為の仕掛け。

 

人間は下に降りるときは暗さを伴いながら、上に登るときは明るさを伴いながら進むと新たな刺激を期待する心理状態になりやすい。

 

そしてここは障害者の作品を展示する美術館。風がそよぐ芝生の小道を歩く体験を経て、大らかな気持ちでドアを開けてほしいとの願いがある。

 

豪華な仕掛けじゃないけれど、そのランドスケープの考え方こそが建築なんだなあ。

 

いつ観ても変わらぬ良い絵がそこにはありました。